前田日明って、どんな人?
前田日明さんは、1959年生まれの大阪府出身の元プロレスラー、総合格闘技プロモーター、YouTuberです。
画像引用:前田日明チャンネル
1977年に新日本プロレスに入団し、プロレスラーとしてデビュー。
1984年に『UWF(ユニバーサル・プロレスリング)』を旗揚げし、それまでのプロレスの常識を覆す試合スタイルで人気を博しています。
1999年、霊長類最強の異名を持つアレクサンダー・カレリンとの対戦を最後に、現役を引退しました。
その後は、総合格闘技団体『RINGS(リングス)』のCEOや、『HERO’S(ヒーローズ)』のスーパーバイザーを務めています。
2008年からは、全国の不良達を集め、格闘技を通じた更生とメジャー団体でも通用する選手の育成を目標とする『THE・OUTSIDER(ジ・アウトサイダー)』のプロデューサーに就任しています。
現在は、格闘技への造詣の深さと多方面にわたる趣味の知識を活かし、YouTuberとしても活動しています。
今回のエピソードは、リングス代表だった頃のもの
前田日明さんは、現役時代もさることながら、引退後の活躍ぶりも有名です。
特に名選手を発掘する能力は抜群で、無名時代のヒョードルやノゲイラ、朝倉兄弟などを表舞台に引き入れ、後の活躍のきっかけをつくっています。
この慧眼ぶりは、前田さんの持つ高い格闘センスによるところもあるでしょうが、「お金が無かった」ことで育まれた…という側面もありそうです。
というのも、前田さんは自身が主催する格闘技団体の加入選手を発掘すべく、世界を飛び回っていた時期があります。
当時、団体の経営は厳しかったため、一流どころの選手を招き入れるだけの資金はありませんでした。
そこで前田さんが狙いを付けたのは、日の目を見ない隠れた実力派や、未知の可能性を持つ無名の新人などの、いわゆる「ダイヤの原石」です。
このように、資金難のなか自らプロモーターの役割もこなすことで、前田さんの選別眼はどんどん磨かれていきました。
今回は、そんな前田さんが『リングス』の運営をしていた頃に、ジョージアで体験したというエピソードを紹介します。
当時のジョージアは混乱の真っ只中だった…
ジョージア(旧グルジア)は、黒海とカスピ海に挟まれた、東欧の小さな国です。
かつては共産主義である旧ソビエト連邦圏の一国でしたが、1990年前半のソ連の解体に伴い独立国になります。
ただ、ジョージアはソ連の支配が長く続いていた地域であったため、独立を果たした後はあらゆる方面で対立路線を歩んでいました。
つまり、ロシアとジョージアの関係は険悪というわけです。
さらに、ソ連から独立したばかりのジョージアでは内戦も勃発しており、誰にも先の見えない混迷を極めた国内情勢でした。
当時、外務省ではジョージアとその周辺を「渡航危険地域」とみなしていたため、日本から渡航するような人はほぼ皆無だったようです。
そんな内戦真っ只中の最中、前田日明さんは新たな選手を獲得するためにジョージアを訪れることになります。
前田さんはかねてより、ある人物から「ぜひ来て欲しい」と熱烈なラブコールを受けていたからです。
そのオファーに応えるべく、運航便の欠航に次ぐ欠航のなか、ようやく前田さんは遠い異国の地に降り立ちました。
街の盟主でもあった交渉相手から、「ある仕事」を依頼される…
前田日明さんをジョージアに招待したのは、サンボの国内チャンピオンだったアルティミシュビリ・ノダリという人物です。
彼は、これ以降前田さんと深く関わりを持つようになり、最終的にはリングス・グルジアの代表も務めています。
ノダリさんは、自身の持つコネクションを存分に発揮し、ジョージア国内の有望な格闘家たちを前田さんに紹介してくれました。
ちなみに、彼は世界でも上位に入るサンボ選手でありながら、数学の博士号も持つ異色の格闘家です。
加えて、ノダリさんの家系はジョージア国内で「タマダ」と呼ばれている、街の盟主でもありました。
このタマダというのは、街の行事を仕切ったり、前途ある優秀な若者に対して金銭面の支援をしたりと、地域貢献的な役割も担う存在だそうです。
そんなノダリさんに「よく来てくれました!」と、手厚い歓迎を受けた前田さん。
ジョージア滞在中はアテンドのみならず、彼の自宅にも泊めてもらえることになりました。
この粋な計らいにより、ジョージアで精力的に活動していた前田さんですが、仕事を終えてノダリさんの自宅に戻ったとき、書斎に通されたことがあったそうです。
2人が書斎の席につくなり、ノダリさんは机の上に革の袋を3つ、ポンポンポンッと置きました。
「コレ(革の袋)について、相談がある」
前田さんの目の前に置かれたその袋は、コンビニの買い物袋くらいの大きさでした。
「コレは何だ?」
前田さんが袋の中身について尋ねると、ノダリさんは中に入っている物をガラガラッと取り出してみせました。
なんと、中身はダイヤモンドでした。それも大量の―。
「コレ(ダイヤ)を日本で売るための手伝いをしてくれないか?」
前田さんからすれば、予想だにしない不可解な依頼でした。
行き場を失ったダイヤと、その前に現れた日本人…
実はこの一連のオファーには、前田さんにジョージア国内の選手を売り込む以外にも、別の目的があったのです。
背景には、当時この国が抱える事情が関係していました。
この国ではダイヤモンドがよく採れましたが、これまでに産出されたダイヤはすべて、東側(旧ソ連)経済圏のみで取引されていました。
しかし、ソ連の崩壊により、この国で採れたダイヤは行き場を失っていました。
そのため、ジョージアでは早急に新たな販売ルートを確立する必要があったのです。
そこで、ノダリさんが目を付けたのが日本です。
日本は当時世界トップの経済力がありましたし、ダイヤの市場規模もアメリカに次ぐ世界第2位を誇ります。
つまり、取引をするには絶好の相手というわけです。
しかし、内戦により不安定な政情が続いている国を訪れるような日本人など滅多にいません。
そんな状況のなか、「ジョージアに行ってみたい」という変わった日本人が、ノダリさんにコンタクトを取ってきました。
しかも、その男は自分と同じ格闘家でした。
ノダリさんからすれば、まさに「天啓」ともいうべき出会いでした。
こうして、ダイヤ販売のビジネスパートナーとして、前田さんに白羽の矢が立ちました。
不安定な情勢もあり渡航は何度かキャンセルになりましたが、「何とか来て欲しい!」と熱心に説得を続けたのには、このようなウラがあったというわけです。
そのダイヤの品質には、文句のつけようがなかった…
ただ前田さんの立場としては、この突然の誘いに「はい、OKです」と二つ返事で快諾することなど出来ません。
ノダリさんを諭すように、以下のように切り返しました。
「ダイヤは品質だとか、カットの仕方だとかで価値が全然違うんだよ。」
たしかに前田さんの言う通り、ダイヤ自体は世界で毎年何十トンと採掘されているのですが、価値の高い宝飾用ダイヤは全体の1〜2割ほどしかありません。
さらにその中でも、大きさやカットの仕方、透明度、色味などによって価値は様々です。
つまり、いくらダイヤが採れるからといって「低品質なものは高く売れない」ということになります。
しかし、ノダリさんの返答は驚くべきものでした。
「このうちの半分のダイヤは、アントワープでも最高のカッティング師に行ってもらっている。鑑定書もある。」
アントワープとは、ベルギーにある港湾都市です。
ここは世界最大のダイヤモンド取引の街として、古くは中世の時代から名を馳せています。
アントワープでは、ダイヤの輸入・加工・輸出をベルギー政府主導で行っており、世界中のダイヤの約80%がこの街に集まると言われるほど巨大な市場を形成しています。
当然、ダイヤの加工や鑑定を行う職人も多く住んでおり、そのレベルは世界最高峰といわれています。
「残りの半分は、鑑定書はアントワープで付けて、カッティングに関してはロシアの職人にやってもらった」
このときの前田さんにはこの意味がよく分かりませんでしたが、帰国後に詳しい人に尋ねたところ「ロシアンカット」というものがあることを教えてくれました。
このロシアンカットというのは、贅沢かつ独特のカッティングを特徴としており、これが施されたダイヤはそれだけで値打ちがあるようなものだそうです。
「そうかそうか。んで、どれ位の品質なんだ?」
「市場に出回っているあらゆるカラーの、最上級のものを揃えられる。フローレスの全カラーを揃えることもできる。」
フローレス(FL)とは、ダイヤ透明度を表すグレードの中でも最上級のものを指します。
日本の有名な宝石店で売られているダイヤのグレードがVVS1だとすると、それよりも上の、更に上のグレードということになります。
FLのダイヤは全体の約1%にも満たないので、当然価値はグーンと跳ね上がります。
ダイヤ透明度のグレード(一部)
FL | 最上級グレード。 異物やキズ、スレが一切無いもの。 |
IF | 異物が一切無いもの |
VVS1 | 一流宝石店で売られるクオリティ。 熟練の職人でも、異物の確認が困難なレベル。 |
VVS2 | 熟練の職人が10倍の倍率の顕微鏡で見て、わずかに異物が確認できるレベル |
「とんでもなく大きいものは無理だが、ある程度ならどんなカラット数でも揃えられる。これを日本で売るための協力をしてくれないか?」
ダイヤの産地として有名なのは南アフリカですが、実はここ10年前後でみると、産出量ではロシアが世界一です。
ジョージアはロシアの隣国なので、ダイヤが大量に採れたとして何の不思議もありません。
前田さんの予想に反して、ジョージア産のダイヤモンドは質・量ともに申し分の無いものでした。
世界的なカルテルも手つかずの地だったため、独自の価格で好きなだけ売ることも可能…
ジョージアで採れるダイヤモンドには、もう一つ大きな特徴がありました。
それは、世界的なカルテルが関与していないということです。
なんでも、ダイヤモンド市場には「デビアスグループ」と呼ばれる、世界的な元締めが存在するそうです。
デビアスは、ダイヤの採掘・流通・加工・卸売までを一手に行う、ダイヤ産業における世界最大の企業です。
創業は18世紀にまで遡るほど歴史も古く、世界35か国をも股にかけて事業を展開する、この業界で知らない者はいないほど圧倒的な存在です。
ですが、いくらデビアスの強大な力を持っているといえど、所詮は資本主義経済圏に限っての話です。
共産主義である、旧ソビエト連邦圏までは掌握しきれていませんでした。
つまり、ジョージアをはじめとする西側(共産主義)諸国のダイヤ産業は、デビアスの支配下には置かれていなかったのです。
デビアス手つかずのダイヤということは、取引相手さえ確保できれば、旧ソ連時代と同じように独自のルートで自由に売ることができてしまいます。
さらに、デビアスを介していないぶん安く販売することもできますし、値段も好きなように決められます。
高品質のダイヤを高利益かつ低価格で、好きなだけ販売できるという、まさに夢のようなビジネスです。
日本から遠く離れた地で、大富豪へのきっかけを掴んだ前田は…
「コレを売ったら、あっという間にビルが建つな…。こんな話ってあるんだなァ。」
これまで金銭面で散々苦労してきた前田さんですが、遠い異国の地で思わぬビジネスチャンスに巡り合うことになりました。
そうと決まれば、あとはやるだけです。
ちょうど前田さんの知り合いに、信頼できる宝飾関係者が二人ほどいました。
彼らにこの話を持ち掛けたところ、あまりの好条件にトントン拍子でビジネスパートナーになってくれることが決まります。
仲間たちとアレコレ検討を重ね、なんとか日本で商売が出来そうだ…というところまでの確証がとれました。
しかし、ここで思わぬライバルが現れます。
なんと、銀座の宝石店がロシア産ダイヤを輸入し、前田さん達よりも先に日本で売り出し始めたのです。
その宝石店には、高品質のダイヤがそれまでの常識では考えらないほどの破格値でズラッと並びました。
当然、このお店は大繁盛―。
飛ぶようにダイヤが売れていきます。
この状況を見た前田さんは、悔しさが隠しきれません。
あと一歩のところで先を越されたビジネスチャンスだが…
先を越されはしたものの、ライバルの成功を目の当たりにした前田さんたちは「二番煎じでも充分商売になる」と確信します。
これに続けとばかりに、再びダイヤ販売の準備を進めます。
急げや急げ!と急ピッチで、各方面の算段をつけていき、ようやく販売開始の目前まで漕ぎ着けました。
「これで俺も億万長者か…」
感慨にふける前田さんでしたが、またもや事態は急展開を迎えます。
なんと、先行してロシア産ダイヤの販売をしていた宝石店の重役たちが、相次いで失踪してしまったというのです。
さらには、その後ほどなくして、その会社自体も店を畳んでしまいます。
事件直後はマスコミ各社でもこれを盛んに取り扱っていましたが、その後の足取りが掴めないのか、しばらくすると追加報道も出なくなります。
結局、行方不明となった3人のその後の消息は分からずじまいとなってしまったのです。
事件後、前田の協力者たちも脅しを受ける…
ライバル店の突然のリタイヤを受け、なにやら狐につままれた気分の前田さんでしたが、開業に向け着々と準備を進めます。
すると、前田さんに協力していた宝石商2人から連絡がありました。
「デビアス本社から呼び出された」
彼らは元々デビアス社の宝石も取り扱っていましたので、両者に仕事上の繋がりが無いとは言えません。
ただ、特定の宝飾関係者をデビアスがわざわざ呼びだすなんてことは、通常ならありえないことです。
しかも、呼び出し先はなんと、ベルギー・アントワープの本社から…。
この状況から、なにやら只事でない雰囲気を感じ取った宝石商たちですが、呼び出しには従わざるを得ませんでした。
デビアス本社を訪れた宝石商2人に対して、そこの関係者は…
「君達がジョージアのダイヤ販売事業から手を引かなければ、今後一切の取引は出来ない。君達に宝石を売ることはできない。」
と、圧力を掛けてきたそうです。
続けざまに、関係者は衝撃的な言葉を口にします。
「銀座にある宝石店の店主が居なくなった事件を知っているか?君達もああならないように気を付けたほうが良い」
このストレート過ぎる脅迫を受けて、先の失踪事件の真相が明らかになりました。
宝石商たちはベルギーから逃げるように帰国し、前田さんたちの事業から手を引いたそうです。
ほどなくして、ジョージアにいるノダリさんにも別の方面から圧力が掛かったようで「ダイヤの取引を辞めたい」という旨の連絡が前田さんにありました。
一説によると、「ダイヤの希少性というのは、デビアスによって創られたものだ」とまで言われています。
世界中で採れたダイヤのほとんどをデビアスが統括することによって、ダイヤの価値を守っているのだそうです。
本来ダイヤにそこまでの希少価値は無い(結構沢山採れる)が、デビアスで流通量を上手く操作し、小出し小出しに売ることで価格が下落しないようにしている…という噂まであります(真偽不明)
デビアスにとって、旧ソ連のダイヤは自らの立場を揺るがしかねない存在であったため、それを自分たち以外が手にすることが許せなかったのかもしれません。
こうして、前田さんの億万長者への道は途絶えたということです。
信じるか、信じないかはアナタ次第…
いかがでしたでしょうか?
今回は前田さんがジョージアで体験したエピソードを紹介させていただきました。
これが本当なら、とても恐ろしい話ですね。
このエピソードについて、前田さんは「都市伝説」としているため、実際の真偽は不明となります。
しかしこのエピソード、絶妙なリアル感があるような気がします。
今回のお話が気になった人向けに、前田さん本人が語るYouTube動画のリンクを貼っておきます。興味があれば、ぜひご覧ください。
さて、終わりに今回のテーマにまつわるアイテムの宣伝です。
ダイヤモンドは綺麗ですが、確かに高すぎる気がします。
そんな時はコレ。
「ジルコニア」といわれる、人工の宝石です。
25mmという超大型サイズながら、価格は二千円ちょいという超コスパです。
近年は人工ダイヤも一般的になってきましたが、(天然ダイヤまでとはいかないものの)結構お値段が張ります。
その点、このジルコニアなら、くら寿司1回我慢するだけで購入できます。
家宝にしたり、ルパンごっこに使ったりと多用途に使えるので、1人120個くらい持っていても良いかもしれません。
当サイトは「開放」をコンセプトとしています。
今回紹介したもの以外で、面白い都市伝説やエピソードがありましたら、コメント欄にて知識を開放をして頂けると幸いです。
扱ってほしいテーマがある場合も、ぜひコメント欄までよろしくお願いします!
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